文豪ストレイドッグス

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「文学の森へ 神奈川と作家たち展第2部 芥川龍之介から中島敦まで」とのコラボ企画実施決定!

2023年2月11日(土・祝)~3月26日(日)に県立神奈川近代文学館で開催する「文学の森へ 神奈川と作家たち展第2部 芥川龍之介から中島敦まで」で、「文豪ストレイドッグス」とのコラボ企画を実施。春河35先生のイラストを使用したオリジナル缶バッジのプレゼント、TVアニメ第4シーズン関連の展示を行います。

◆「文学の森へ 神奈川と作家たち展第2部 
芥川龍之介から中島敦まで」展示内容

関東大震災から敗戦まで―芥川龍之介の衝撃的な死に始まる激動の時代。文学に生涯をかけることで生き抜いた中島敦ら13人の文豪を紹介します。登場する文豪は芥川龍之介、横光利一、川端康成、永井荷風、谷崎潤一郎、岡本かの子、吉川英治、堀口大學、西脇順三郎、中原中也、小林秀雄、堀辰雄、中島敦。原稿や書簡など、作家のいわば分身ともいえる資料を通してリアル文豪の息吹に触れてください。

◆「文豪ストレイドッグス」オリジナル缶バッジをプレゼント企画

期間中に「文学の森へ」展にお越しいただき、ワークシートに参加いただくと、春河35先生のイラストを使用したオリジナル缶バッジ〈芥川龍之介〉〈中島敦〉をプレゼントします。

プレゼント内容・プレゼント期間 ・芥川龍之介 缶バッジ
2023年2月11日(土・祝)~3月5日(日) 
休館日:月曜日
・中島敦 缶バッジ
2023年3月7日(火)~3月26日(日) 
休館日:月曜日
※缶バッジは各1000個限定となります。配布を終了する場合は前日の17時までに神奈川近代文学館の公式Twitterでお知らせいたします(お知らせした翌日から配布しません)。※お一人様各1点のみのプレゼントとなります。再入場による贈呈は致しません。

◆アニメ第4シーズン展示

エントランスホールにて、TVアニメ第4シーズンのキービジュアルを展示いたします。
※エントランスホールには展覧会入場者のみがお入りいただけます。

隴西の李徴は博学才穎、天宝の末年、若くして名を虎榜に連ね、ついで江南尉に補せられたが、性、狷介、自ら恃むところ頗る厚く、賤吏に甘んずるを潔しとしなかった。

いくばくもなく官を退いた後は、故山、虢略に帰臥し、人と交を絶って、ひたすら詩作に耽った。

下吏となって長く膝を俗悪な大官の前に屈するよりは、詩家としての名を死後百年に遺そうとしたのである。

しかし、文名は容易に揚らず、生活は日を逐うて苦しくなる。李徴は漸く焦躁に駆られて来た。

この頃からその容貌も峭刻となり、肉落ち骨秀で、眼光のみ徒らに炯々として、曾て進士に登第した頃の豊頬の美少年の俤は、何処に求めようもない。

数年の後、貧窮に堪えず、妻子の衣食のために遂に節を屈して、再び東へ赴き、一地方官吏の職を奉ずることになった。一方、これは、己の詩業に半ば絶望したためでもある。

曾ての同輩は既に遥か高位に進み、彼が昔、鈍物として歯牙にもかけなかったその連中の下命を拝さねばならぬことが、往年の儁才李徴の自尊心を如何に傷けたかは、想像に難くない。

彼は怏々として楽しまず、狂悖の性は愈々抑え難くなった。一年の後、公用で旅に出、汝水のほとりに宿った時、遂に発狂した。

或夜半、急に顔色を変えて寝床から起上ると、何か訳の分らぬことを叫びつつそのまま下にとび下りて、闇の中へ駈出した。

彼は二度と戻って来なかった。附近の山野を捜索しても、何の手掛りもない。その後李徴がどうなったかを知る者は、誰もなかった。

翌年、監察御史、陳郡の袁傪という者、勅命を奉じて嶺南に使し、途に商於の地に宿った。

次の朝未だ暗い中に出発しようとしたところ、駅吏が言うことに、これから先の道に人喰虎が出る故、旅人は白昼でなければ、通れない。

今はまだ朝が早いから、今少し待たれたが宜しいでしょうと。袁傪は、しかし、供廻りの多勢なのを恃み、駅吏の言葉を斥けて、出発した。

残月の光をたよりに林中の草地を通って行った時、果して一匹の猛虎が叢の中から躍り出た。

虎は、あわや袁傪に躍りかかるかと見えたが、忽ち身を飜して、元の叢に隠れた。

叢の中から人間の声で「あぶないところだった」と繰返し呟くのが聞えた。

その声に袁傪は聞き憶えがあった。驚懼の中にも、彼は咄嗟に思いあたって、叫んだ。

「その声は、我が友、李徴子ではないか?」袁傪は李徴と同年に進士の第に登り、友人の少かった李徴にとっては、最も親しい友であった。

温和な袁傪の性格が、峻峭な李徴の性情と衝突しなかったためであろう。

叢の中からは、暫く返辞が無かった。しのび泣きかと思われる微かな声が時々洩れるばかりである。

ややあって、低い声が答えた。「如何にも自分は隴西の李徴である」と。

袁傪は恐怖を忘れ、馬から下りて叢に近づき、懐かしげに久闊を叙した。

そして、何故叢から出て来ないのかと問うた。李徴の声が答えて言う。自分は今や異類の身となっている。

どうして、おめおめと故人の前にあさましい姿をさらせようか。

かつ又、自分が姿を現せば、必ず君に畏怖嫌厭の情を起させるに決っているからだ。

しかし、今、図らずも故人に遇うことを得て、愧赧の念をも忘れる程に懐かしい。

どうか、ほんの暫くでいいから、我が醜悪な今の外形を厭わず、曾て君の友李徴であったこの自分と話を交してくれないだろうか。

後で考えれば不思議だったが、その時、袁傪は、この超自然の怪異を、実に素直に受容れて、少しも怪もうとしなかった。

彼は部下に命じて行列の進行を停め、自分は叢の傍に立って、見えざる声と対談した。

都の噂、旧友の消息、袁傪が現在の地位、それに対する李徴の祝辞。